最初からブレていない目標がある。私が暇になること。
「暇になる」というのは怠けたいわけじゃない。今やっていることを誰かに渡せれば、次の新しいことを自分が先行して始められる。そして後に続いてくれると信じている。
なぜ3年間、一人でやるしかなかったか
コードレビューは、ベンダーからシステムを引き継いだ日から今まで、自分がやってきた。
ただ「他に人がいなかった」だけではない。このプロダクトが持つ構造的な複雑さが、レビューを一人に集中させていた。
うちのシステムは、治験CRMと仕込みサイトが同じアーキテクチャで連動している。関数の共通化が進んでいるため、片方の変更が意図せずもう片方に影響することがある。影響範囲が見えにくい。「このPRは大丈夫か」の判断には、両方のシステムの文脈を頭に持っておく必要があった。
チームに未経験の2人がいる。育てながら一緒に動いてきたが、この文脈を持てるようになるには時間がかかる。全PRの最終判断を自分がやる以外になかった。
ボトルネックは自分だとわかっていた。でも他に選択肢がなかった。
手を離した瞬間
数ヶ月前から、先輩メンバーにコードレビューを任せ始めた。
正直、怖かった。
品質への不安もあるし、何かミスが起きたときの責任の話もある。でも「チームを前に進めるには段階的委譲をすべき」という判断は変わらなかった。リスクは承知した上でやる。覚悟の問題だと思った。
やり方は段階を踏んだ。最初は自分と二重でレビューしていた。彼女のレビューを確認してから、自分もレビューしてマージする。しばらくそれを続けた。
次のステップとして、検証環境(stgブランチ)へのマージは彼女の承認だけで通せるようにした。mainブランチへのマージは今でも自分がやっている。最後のリスク回避として、本番に近い段階だけは自分が見る。
結果——意外となんとかなっている。バグはゼロだ。
「任せてみないとわからないこともある」と気づいた。3年間ずっとボトルネックだった自分から、初めて一部が剥がれた。小さい変化に見えるかもしれないが、自分にとっては大きかった。
次は仕組みに渡す
人への委譲と並行して、仕組みへの委譲も進めている。個人のスキルに依存したレビューを、ルール化・平準化して自動化する。今取り組んでいることと、これから目指すことを段階で書く。
ステージ1(進行中):結合試験の GitLab CI 自動化
手動でやっていた結合試験を、CI上で自動化する。
設計はClaude と一緒に進めている。「人の手をかけない、誰がやっても同じ品質になる」というゴールを起点に、何が技術的に実現できるか、どの構成が現実的かを壁打ちしながらイメージを具体化している。
構成のイメージは、GitLab CIでstgブランチとmainブランチへのマージ時に結合試験が走り、通ればマージOKという形だ。stg環境でボタンを押せば試験が走るようにしてもいい。
現状は他部署からの最優先依頼に割り込まれていて、作業が止まっている。ただ、この自動化が終われば、将来の依頼への対応スピードも上がる。「待っていてくれ、これが先だ」と言うつもりでいる。自動化への投資を自分の言葉で説明できるようになってきた。
ステージ2(次):Claude Code によるコードレビュー
PRが出たタイミングで、AIが一次レビューを行う仕組みを作りたい。
具体的には、Claude Code に CLAUDE.md でレビュールールを定義して実行させることができるんじゃないかと考えている。まだ妄想の段階だが、実現できれば命名・重複・潜在バグ・セキュリティの観点を自動でチェックできる。人間のレビューは設計判断に集中できる。
特に潜在バグの検知に期待している。前述のとおり、治験CRMと仕込みサイトが連動しているため、関数の変更が思わぬ場所に波及するリスクがある。この文脈をCLAUDE.mdに書いておけば、AIがそのリスクを意識した観点でレビューしてくれる可能性がある。
ステージ3:マージ段階での不具合検知
mainへのマージ前に自動で不具合を検知する仕組みを作る。品質ゲートを自動化する。ここまでできれば、自分がmainのマージ承認者でいる必要もなくなってくる。
ステージ4:開発フロー全体の自動化
可能な限り、一連の開発フロー自体を自動で回せる状態にしたい。「自分がいなくても品質が保たれる」仕組みを作ることが、このロードマップの終着点だ。
「私がいなくても回る組織」がずっとゴール
内製化を進めたのも、未経験の2人を育ててきたのも、AIを使った自動化に取り組んでいるのも、全部つながっている。
どれも「自分がボトルネックであることをやめる」ための行動だ。
先輩への委譲が意外となんとかなったように、自動化も「やってみないとわからない」ことがたくさんある。完成形を描いてから動くより、動きながら形を作る方が自分には合っている。
暇になれば、次のことを始められる。自分が先頭に立って新しいことを開拓して、チームが後に続いてくれる。その繰り返しで、組織は育つと思っている。
今はまだ全然暇じゃない。でも方向性は変わらない。
その後、AI時代のレビューで「理解せず提出する」問題にどう向き合うかを設計した話はAIに説明させるな、質問させろ——「分かって出す」を仕組みにする理解度ゲートに書いた。口頭でやっていた「なんでこうした?」を提出前のセルフゲートに仕組み化する試みだ。
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